本年度は、コンピュータグラフィックスを用いた仮想物体の写実的画像生成のために、レンダリングパラメータ決定支援システムの開発と大気による光の散乱を考慮した画像生成手法を開発し、仮想物体の高精度輝度計算法の確立を目指した。以下、それぞれについて概要を述べる。 コンピュータグラフィックスを用いて、ユーザの意図を反映した画像を作成するためには多くのパラメータを適切な値にする必要がある。適切なレンダリングパラメータを設定するには、画像生成アルゴリズムに精通し、パラメータの意味を理解していなくてはならない。しかし、これらを満たしていても、多くの場合、レンダリングパラメータは試行錯誤によって決定されている。また、一般に、画像生成は多くの計算時間を必要とするため、ユーザの思考が中断され、適切なパラメータの決定は極めて煩雑な作業となる。本研究では、この問題を解決するため、パラメータの決定を支援するインタラクティブなシステムを提案する。提案システムを空のレンダリングパラメータ設定に応用した例を示しその有用性を確認した。 次に、大気散乱を考慮した画像生成手法では、グラフィックス専用ハードウェアを利用して高速かつリアルに画像を生成する手法の開発を行った。大気散乱の効果には、例えば、スポットライトにより生じる光跡やフォグ、空の色などがある。提案法では、物理現象に基づいて大気散乱をシミュレートし、かつ、高速に画像を生成できる。微粒子による散乱光計を記憶したルックアップテーブルを作成し、グラフィックスハードウェアを利用したボリュームレンダリング法と組み合わせることでリアルタイムでの画像生成を実現した。提案手法を前述のライトビームや空、また、宇宙から見た地球のレンダリングへ応用し、その有用性を確認した。
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