研究概要 |
低密度パリティ検査(low-density parity-check, LDPC)符号の復号アルゴリズムの一つである「sum-productアルゴリズムに基づく繰り返し復号(以下「繰り返し復号」と略記する)」は、最大事後確率復号を良好に近似することが知られている。しかしながら、符号の検査行列から一意に定まるタナーグラフ内に閉路が存在するとき、繰り返し復号の近似精度が劣化することが知られている。特に長さ4以下の閉路が多数存在する時には、その劣化の度合が深刻となる。 平成14年度の研究において、研究代表者は、巡回符号およびそれらに基づく符号に対して、長さ4以下の閉路を持たないタナーグラフを生成する検査行列を代数的に構成する手法を明らかにしている。しかしながら、これらの符号のいくつかに対して繰り返し復号を適用した場合、高SNRにおいて誤り率の改善が見られなくなる現象(エラーフロア現象)が生じることが数値実験の結果から確認された。 エラーフロア現象は、符号の最小距離、および反復復号の異常終了の原因となるタナーグラフの構造に深く関わっている。そこで、エラーフロア現象を回避する手法を開発するため、本年度は以下のような研究を行った。 1.タナーによって提案された、タナーグラフによって定まる符号の最小距離の下界の精度について検討し、従来の代数的符号理論で得られている最小距離の下界(BCH下界)との関連について検討を行った。その結果、タナーの下界とBCH下界とが一致するいくつかの場合を指摘することに成功した。 2.従来の反復復号とは異なった原理に基づく復号方法である、自由エネルギーのベーテ近似に基づく復号方法を開発し、それがエラーフロア現象の回避に極めて有効であることを数値的に示した。
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