研究概要 |
本研究では,D-A変換器に対し,あらゆる入力信号に対して厳密に安定,かつ出力誤差が解析可能となる量子化器の効率的な実現を目標としている.裏面雑誌論文に掲載されている論文において,まず安定な多ビットΣΔ変換器と,有限長のベクトルを出力する非線形時不変量子化器の組み合わせによる安定な量子化器を提案している.本量子化器の利点として,出力信号が有する誤差スペクトルのピークが従来の量子化器に比べ大きく低減される点がある.本研究において,従来のシグマデルタ変換器の性能の再評価とアルゴリズムの解析を行った.始めに,変換器の安定性をある十分条件の下で保証しつつ出力誤差成分のピークを最小化するための変換器の設計アルゴリズムを提案し,多数の変換器の次数に対して最適設計を行った.これにより,用いた安定性を保証する十分条件の下での変換器の最適な性能が,明らかになった.少なくとも,オーバーサンプリング比128程度でさえSN比130dB程度を実現する変換器が存在することが明らかになった. この結果は,国際会議International Symposium on Circuits and Systems 2003 Bangkok Thailandで発表されることが既に決定している. この性能は,研究代表者自身が当初予想した性能を遥かに凌ぐ性能であり,またこの設計において更なる性能改善の余地が残されていることから,研究実施計画においては,回路規模の最適化や非線形時不変量子化器との組み合わせを考察する予定であったが,計画を変更し,シグマデルタ変換器自体の設計法の更なる改善を試みている. 線形計画法を用いた設計法を新たに開発し,現在,この設計法を上述の設計法に組み込むための手法を検討中である.この線形計画法を用いた設計法については,新たに雑誌論文に投稿中である.
|