研究概要 |
本研究では、簡素なスイッチング回路である区分定数系や重区分線形系に対して、回路の呈する分岐現象や同期現象の解析を行うことを第一の目的としている。また、それらの回路でモデル化できる工学的応用回路(例えばサンプリング制御系)に対して、解析結果に基づいた高機能システムの開発を行うことを第二の目的としている。本年度(平成14年度)では主に、第一の目的である現象解析を進める研究計画であった。 これに対して、今年度は主に以下の2点の成果を得た。 1.区分定数発振器の結合系の呈する分岐現象の解析 簡素な区分定数発振器を結合した大規模回路の呈する分岐現象を解析するために、解の計算アルゴリズムを導出た。このアルゴリズムは、回路動作をある離散時間系に厳密に対応させることで実現したものであり、その結果解は厳密に求まり、さらに大規模な系に対しても容易に応用できる。解析結果として、区分定数系では今まで明らかになっていなかった分岐の様子が一部明らかになった。これらの結果は国際会議(IEICE, NOLTA2002年10月)等で発表し、現在論文誌に投稿中である。 2.遅れ時間を利用した新しいカオス制御法の提案 カオス制御とは、カオス解の中にナ内存する不安定な周期解を安定化することである。本研究では、遅れ時間を利用することで制御対象の位置情報を必要としない新しい制御手法を提案した。本手法は従来知られている遅延状態フィードバック制御法とは基本的なアイデアが異なり、本手法の方が簡素である。またこの手法はサンプル値制御系として容易に実現でき、区分定数系には極めて有効であることを示した。これらの成果は研究会(IEICE, NLP)等で発表し、現在論文として投稿準備中である。
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