本年度得られた研究成果は以下の通りである。 1.気導音声と骨導音声の収録 日本語5母音、及び単語音声(都市名・数字)発声時の気導音声と骨導音声の収録を、防音室内で、成人男性10名に対して行った。また、防音室内で電子協騒音データベースDATの工場騒音を再生し、同様の収録を行うことで、雑音(工場騒音)環境下音声データを作成した。 2.母音定常部に対しての分析、及び話者識別実験 日本語5母音の母音定常部に対して分析を行った結果、母音発声時における骨導マイク出力と気導マイク出力の出力レベルの差は、同じ母音を発声しても、人によって大きく異なることが明らかとなった。そこで本年度は、母音発声時の骨導音声と気導音声のエネルギー比のみを特徴量として用いて、クリーンな(雑音環境でない)環境下で収録した音声に対して話者識別実験を行ったところ、話者10名に対して85.0%の識別率が得られた。 3.数字音声の分析 音声を本人認証用の鍵として用いる場合、暗証番号などの数字音声を用いた話者照合が必要・不可欠になってくることから、数字音声発声時の骨導音声と気導音声に対する分析を行い、話者照合における有効性についての考察を行った。数字音声では、話者の特徴が特に子音部分に骨導音声と気導音声の時間構造の相違として表れやすいことが明らかとなった。 来年度以降も引き続き、上記研究項目1〜3に関して、より多くの音声サンプルの収録を行い、詳細な実験・検討を行う予定である。
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