研究概要 |
本研究では,冗長符号化された配信データを複数のマルチキャストサーバに分散配置し,ユーザはネットワーク状態に応じてそれら複数のサーバから必要な符号化データを並行受信,復号することで,多数のユーザへの正しく速やかなデータ配信を実現することを目的としている.本年度は,まず問題を簡単化するため,冗長符号化を考えない形での分散サーバの選択アルゴリズムを提案しその評価を行った.提案アルゴリズムでは,複数のマルチキャストサーバに対し,ユーザはどのサーバから受信することがもっとも受信状態をよくできるかを知るためにIGMPのトレース機能を利用する.ユーザは定期的にトレースを行うことで,マルチキャストルータでの画像フレーム棄却率などのネットワークステータスを取得し,それに基づきもっとも良好な経路状態であると判断できるサーバからのデータ受信を行う.これを経路状態に応じて自律的かつ動的に行うことで,集中的管理を行うことなく,より受信品質のよいマルチキャスト木が各サーバごと形成される.さらに多数のトレースメッセージによるネットワーク負荷の上昇を防ぐための工夫も行っている.シミュレーション実験の結果より,単純な分散サーバアーキテクチャと比較し,提案手法ではより高い受信品質でのデータ受信が可能であることがわかった.これらの成果を情報処理学会論文誌及び並行分散処理に関する著名な国際会議ICPPにおいて発表した.今後は,冗長符号化を伴う形での方式論の提案と性能評価に向けて研究を継続していく.
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