研究概要 |
ディジタルデータの正当性を保証するディジタル署名技術が急速に普及しつつある。本研究の目的は,ディジタル署名が偽造された場合,正規の署名者がそれが偽造されたものであることを証明できる機能をもつ実用的なディジタル署名方式を考案することである. 安全性の検討:2000年末に提案した方式の安全性を詳細に検討した結果,正規の署名者が偽造を証明できない場合があることが判明した. 方式の改良:2000年末に提案した方式を改良し,以下の二つの用途に適した方式を考案した.いずれも偽造が証明可能な方式である. (a)ディジタルデータの公開時期がそのディジタル署名の作成時期より後の場合に有効なディジタル署名方式を提案した.これは,官庁や企業の情報公開用のディジタル署名に適している.このディジタル署名方式の特徴は,ディジタル署名の作成時期にディジタルデータを明かさずにそのディジタル署名の一部だけを公開することである. (b)有向木の構造をもつディジタルデータに適したディジタル署名方式を提案した.有向木の構造をもつデータの例としては,ネットワーク構成を表すデータや会社の組織構成を表すデータがある.このディジタル署名方式の特徴は,部分木の署名を署名保有者が作成できることである.これにより,安全性を損なうことなく,署名者の負担を軽減することができる. 今後の課題.上記のように,特定の用途に適した偽造が証明可能なディジタル署名方式を考案した.しかし,ディジタル署名のデータ量が多いので,改善する必要がある.そのためには,要素技術として,ハッシュ関数,共通鍵暗号,新しい一方向性関数に関する研究を進める必要がある.
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