研究概要 |
今期に遂行した研究活動の主たるところは、1)前年度にほぼ完成していた隠れマルコフモデルに基づく反復復号法の研究とりまとめとそれに関する論文執筆・投稿、2)有色ガウス雑音通信路に適した復号法の開発とその性能検証である。本年度に開発・評価した有色ガウス雑音通信路に適した復号アルゴリズムは、sum-product復号法が出力する一時的復号結果(暫定復号語と呼ぶ)を利用して近似通信路尤度値を計算することにより、既存のsum-product復号法を記憶ある通信路用に拡張したものとなっている。言い換えると、提案復号法は、通信路確率モデルに基づく近似尤度値計算器と復号器の協調動作に基づいている。 本プロジェクトのアプローチは、通信路モデルを復号器に内蔵し、その通信路モデルに適した推論アルゴリズム、例えば、隠れマルコフモデルに対するBCJRアルゴリズム、平均場近似などの事後確率計算アルゴリズムをsum-productアルゴリズムに組み合わせることにより、通信路特性を十分に考慮に入れた復号を可能にしようというものである。本年度に主として取り組んだ有色ガウス雑音通信路において、その雑音状態の推定にはカルマン平滑器を利用した。 本年度の本課題に関する研究の流れを以下にまとめる。本年度の前半では、復号アルゴリズムの理論的検討・予備実験を行った。この予備実験で理論の妥当性をチェックした後、復号シミュレータの開発を行った。具体的には、通信路モデルと提案復号アルゴリズムをC言語で記述し作成した。購入したPCによりシミュレーションに基づく復号器の性能評価を行った。その結果、提案方式が既存の方式と比較して復号性能で優位に立つことが実証された。本研究の成果の一部を、昨年、10月に西安で開かれた国際会議International Symposium on Communications, International Symposium on Information Theoryにて発表した。この結果は現在、論文誌に投稿中である。
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