本年度の研究では、申請者が提案するフラクタル画像符号化アルゴリズムをベースとしたコラージュマップ制御による電子透かし手法を確立するために必要となる基礎理論の構築と基礎実験を行った。本研究では、コラージュマップの変更自体が透かし情報となるので、コラージュマップの制御を如何に行うかが重要となる。そこで、まず、コラージュマップを構成するパラメータとして、フラクタル画像符号化にも用いられるパラメータ:レンジブロック画素平均値、レンジブロック画素標準偏差値、アフィン変換情報、最適ドメインブロックアドレス情報について、Stirmak3・0ベンチマーク攻撃ツールにより各種改変攻撃処理に対する耐性評価を行った。一般的な画素変換、各種フィルタ処理及びランダム幾何学攻撃を含む攻撃処理に対する耐性評価実験の結果により、最適ドメインブロックのアドレス情報が他のパラメータと比較して最も攻撃処理に対する耐性が高く、更にブロックサイズを拡大することにより、この効果が増大することを確認した。しかしながら、画像のクロッピングや大幅な幾何学歪みに対しては、矩形ブロック分割法では対応できないことも確認できた。これにより、コラージュマップ情報を幾何学的攻撃に耐性のある透かしとして利用するためには、画像の特徴を考慮したブロック分割法を適用することが有効であることが分かった。また、ブロック間の類似性については、レンジブロックとドメインブロックの二値化データを解析した結果、画像の骨格構造となる二値化情報を用いることにより、最適ドメインブロックのアドレス情報の各種攻撃処理に対する耐性は更に高まることが分かった。現在、矩形ブロック分割法に対して、画像の特徴に基づく領域分割法の適用を試みている。
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