研究概要 |
本研究ではソフトウェア無線用低IF方式受信機において,DCオフセット並びにイメージ周波数信号を抑圧するため,複素係数フィルタバンクを用いる受信方式を提案した.提案する方式はA/D変換器の変換速度及び解像度に対する要求を緩和し,広帯域通信システムに対応する. 本研究では複素係数フィルタバンクのアナログ部の係数誤差をディジタル信号処理によって補償する方式の特性を理論的に解析した.解析の結果以下のことが判明した. -アナログフィルタの係数誤差をディジタル側で推定し,補償しなければ通信品質は改善しない. -ディジタル側の推定がほぼ完全であれば干渉電力対信号電力が60dBあっても干渉信号を抑圧することができる. 理論検討と同時に実験により提案方式の有効性を確認した.実験においては1次のローパスフィルタ(LPF)とハイパスフィルタ(HPF)をアナログ回路で構成し,DCオフセット成分を入力した.そしてLPF側の出力信号からHPF側の出力信号を推定し,実際の信号と比較した.これにより提案方式の干渉信号再生精度を検討した.検討の結果 -アナログ連続フィルタをアナログ離散フィルタとして近似することが可能である. -提案するアナログーディジタル信号処理アルゴリズムはA/D変換部の必要解像度を約5ビット引き下げることができる. ことが判明した. 今後リアルタイムに処理を行うシステムを構築する予定である.
|