研究概要 |
本研究課題では,ブロードバンド黎明期における「ネットワーク帯域の不均一性」を考慮し,広帯域コンテンツを効率的に中継伝送するための技術について検討を行っている.平成14年度は,適応形コンテンツ配信プロトコル,効率的マルチキャスト配信の評価手法,暗号方式を利用した差別化サービス実現方式に関する検討を行った. 適応形コンテンツ配信プロトコルの検討では,伝送帯域が不均一なネットワークにおいてコンテンツ配信を行う場合に,中継方式を適応的に切り替えて配送速度を高めるためのプロトコルを検討した.複数の受信者に同報伝送を行うマルチキャストでは,伝送帯域の不均一性に柔軟に対処することができず,結果として伝送速度が低下する.そこで,伝送帯域の不均一性に応じてマルチキャストと蓄積中継を選択する手法を検討し,インターネットでの実装を考慮したプロトコルを提案した.具体的には,従来のIPマルチキャスト方式をベースにし,蓄積中継選択時の通信方式を検討した.今後は蓄積中継選択時の伝送方式について詳細を詰め,プロトタイプ実装を行う予定である. 効率的マルチキャスト配信の評価手法の検討では,マルチキャストを行う場合の伝送経路の効率性を高速に評価する手法について提案した.従来,マルチキャスト伝送経路の性能評価にはコンピュータシミュレーションが用いられているが,提案手法では性能評価を算術的に行うことで高速化を実現した.コンテンツ配信時の経路選択に有効であると考えられる. 暗号方式を利用した差別化サービス実現のための基礎検討では,暗号方式を活用することで複数のサービスレベルを一つのマルチキャストで実現した.一般に,マルチキャストでは複数ユーザに同一の情報を送信することになるが,送信される情報を複数回暗号化することで複数のサービスレベルを設定することが可能になった.情報通信のパーソナル化を実現するうえで有効であろう.
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