研究概要 |
本研究課題では,ブロードバンド黎明期における「ネットワーク帯域の不均一性」を考慮し,広帯域コンテンツを効率的に中継伝送するための技術について検討を行っている.平成15年度は,適応形コンテンツ配信技術の実装方式に関する研究を中心に検討を行った. 適応形コンテンツ配信方式をインターネット上に実現するためには,いくつかの実装が考えられる.例えば,複数のIPマルチキャストを組み合わせることでネットワークの不均一性を克服し,1つのコンテンツ配信サービスとして実装することが可能である.一方,IPマルチキャストプロトコル自体を修正することで蓄積配送を可能にし,適応形配信を実現することも可能である.前者の場合,マルチキャストプロトコル部に手を加える必要は一切ないが,コンテンツ配信のどの部分にIPマルチキャストを利用するかを判断し,これらを組み合わせてシームレスな通信を可能にするためのアプリケーションプロトコルが必須である.後者の場合には,ネットワーク層のみで適応形配信を実現するため,コンテンツ配信アプリケーションからは従来どおりのIPマルチキャストに見えるという特徴がある.そこで,これら2種類の実装方式を考慮し,双方について配信プロトコルの骨格を検討した.今後は,IPネットワークテストベッド上に提案したプロトコルを実装し,送受信実験を行う予定である. 適応形コンテンツ配信を効率的に実現する手法として,マルチキャスト配信経路の評価手法,及び暗号を利用した差別化サービス実現方式についても検討を行った.前者は,マルチキャストを行う場合の伝送経路の効率性を高速に評価する手法である.平成15年度では,前年度に提案した手法を改良し,更なる性能向上を達成することができた.後者に関しては,送信される情報を複数回暗号化することで複数のサービスレベルを設定する通信方式について,定量的な評価を行った.
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