マルチメディア移動体通信に適した帯域割り当て方式に関して、平成14年度は次の2つの課題について研究を行った。 1.呼切断率の予測に基づく帯域割り当て方式の提案 マルチメディア端末から通信要求の発呼があった場合、従来は他セルより移動してくる呼(ハンドオーバ呼)のみが使用できる帯域を除いた空き帯域を呼受付の基準としていた。これに対し本研究では、呼受付の基準としてハンドオーバ呼切断率の推測値を用いる方式を提案した。発呼を受けたセルの基地局は、自セルあるいは隣接セルにおける端末数や各端末の使用帯域、過去一定時間の移動パターンを用いてそのセルにおける呼切断率の推定値を計算する。そして、得られた値がある閾値より小さい場合に呼を受け付け、その要求帯域を割り当てる。計算機シミュレーションによる性能評価の結果、従来の帯域割り当て方式と比較して呼切断率を低減することができた。 2.不均一トラヒックが帯域割り当て方式に与える影響の性能評価 従来の帯域割り当て方式や1で提案した方式による性能評価は、これまで端末の動きが統計的に均一であるという条件のもとで行われてきた。実際の通信環境では端末の移動先となりやすいセル(ホットスポット)が存在し、さらにホットスポットが時間とともに変化する場合もある。そこで本研究ではホットスポットが時間変動する不均一トラヒックにおける様々な帯域割り当て方式の性能を計算機シミュレーションにより評価した。さらに、1で提案した呼切断率の予測精度を高める手法を提案し、その評価も行った。その結果、均一トラヒックでは良い性能を示していた1の予測方式が、トラヒックの不均一条件によっては他方式より劣ることが分かった。そして、トラヒック条件に応じて帯域割り当ての方式を変化させることにより、単一方式よりもよい性能が得られることが分かった。
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