まず始めに、新しい四相ZCZ系列の構成法に関する研究を行った。以前、報告者は、四相の直交系列とユニタリ行列から四相ZCZ系列を得ることに成功していた。しかし、四相直交系列は、その周期が2、4、8、16のものしか発見されておらず、多様なZCZ系列を設計するという観点から言えば、直交系列に関する選択肢が少なかった。一方、直交系列に準じる自己相関特性を有するAlmost-perfect系列は、より長い周期を有するものが存在することが知られている。そこで、直交系列の代わりにAlmost-perfect系列を使用することにより、新しい四相ZCZ系列を構成可能であるか検討した。その結果、四相または二相のAlmost-perfect系列とユニタリ行列からも四相または二相のZCZ系列が構成可能であることが明らかになった。Almost-perfect系列は、非常に様々な周期を持つものが存在するので、ZCZ系列構成方法の柔軟性が飛躍的に高まったと言える。ただし、直交系列の自己相関関数のサイドローブは完全に0であるのに対して、Almost-perfect系列では一箇所だけ0以外の値を取る部分が存在する。このことが原因となり、Almost-perfect系列を用いたZCZ系列のZero-Correlation Zoneの長さは、直交系列を用いたものに比べて約半分なってしまうことが判明した。 さらに、近似同期CDMAにおけるセル間干渉について、ZCZ系列の相互相関関数という観点から検討した。その結果、近隣のセル間で同期はずれが起きると、各セル内の干渉端末の個数は増えるが、希望端末に対する干渉電力の総和は増加しないことが明らかになった。この研究は、特定のZCZ系列を仮定して行われたものであるが、同様の信号設計方法を用いた近似同期CDMAに、一般に当てはまるであろうと推測される。
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