研究概要 |
CD, MD, DVDに代表されるディジタルオーディオシステムは日進月歩の速度で開発が進められている.ディジタルオーディオ技術の発展により我々は歪みのない再生音を享受できるようになってきた.しかし,オーディオシステムのヒューマンインターフェースともいえるスピーカは電気信号を機械振動に変換するという複雑な構造を有するためさまざまな歪みを最終的に発生し,ディジタルオーディオシステムの性能向上のボトルネックとなっていた.特にスピーカシステムは非線形性を有するため,補正が困難な非線形歪みを大量に発生する.この非線形歪みはDVD-Audioに代表されるハイサンプリングオーディオでは特に聴感上に影響を与えるとして問題視されている.また,近年では携帯電話により音楽を受聴するというスタイルが定着してきたが,携帯電話の外部サウンダは形状の制約から通常のスピーカに比べ大量の非線形歪みを発生する.以上のようにオーディオのディジタル化は進んでいるものの肝心のヒューマンインターフェース部分で多大な問題を抱えている.そこで,本研究では非線形ディジタル信号処理(特にVolterra級数に基づく信号処理)を利用してディジタルオーディオシステムの高品質化を目指して3カ年間にわたる研究を推進してきた. 今年度は携帯電話でのひずみ補正を実現するために低演算量で動作可能なひずみ補正方式を提案し,実システムにおいて検証した.その結果,従来法と同等の性能を維持しながら,演算量を約1/1000に低減することに成功した.これにより安価で高品質の音環境を携帯電話においても実現することが可能となった.また,ハイサンプリングオーディオ用スピーカのひずみ補正に関して,MINT法を導入した方法を提案した.その結果,従来法と同等の演算量を保ちながら,高いひずみ補正効果が達成されることを実システムにおいて実証することができた.以上の成果により,本研究の目的はおおよそ達成された断言できる.
|