研究概要 |
本研究の目的は,角度広がりを有する信号を含めた移動体通信における多重波伝搬構造を解析することである.そのためには信号の到来方向を精度良く推定することが重要となってくる.本年度得られた知見と成果は以下の通りである. DS-CDMA方式の容量増加のためアダプティブアレーアンテナを用いることが提案されている.FDD方式を用いた下り回線においては上り回線の信号を用いて各ユーザからの信号の到来方向を推定し,そのウェイトを決定する方式が有効と期待される.到来方向推定には,できる限り演算負荷を軽減するために高分解能推定法を避け,同相加算により干渉を抑えた上で2つのアンテナ素子間の位相差を測る方式について,昨年度,逆拡散前のSIRと推定精度の関係などを計算機シミュレーションにより明らかにしてきた.本年度は,フェージングが存在する場合についての検討を行い,信号の識別処理を必要としないQチャネルのパイロットシンボルのみを用いても精度の高い推定が得られることが確認された. 高分解能な信号到来方向推定法としてMUSIC法やESPRIT法といったスーパーレゾリューション法が用いられ,数多くの研究結果が報告されてきた.本年度は,多変量を同時に扱う検索に適しているといわれる遺伝的アルゴリズム(GA)をアナログ量を直接処理できるように改良し,到来方向,電力レベルの推定を行うことを提案し,計算機シミュレーションの結果から提案手法の有効性を明らかにした. 以上,報告したように,本年度予定していた研究課題について十分な成果が得られた.
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