トラヒックエンジニアリング(TE)の目的は、ネットワーク資源を効率的に利用することであり、さらにはそれと同時にユーザから要求される通信品質(QoS)を満足させることである。 本研究の目的は、ISP(Internet Service Provider)のバックボーンネットワークにおいてTEを実現させるための複数のフロー配置アルゴリズムを提案し、それらの負荷平滑化(ロードバランシング)への効果を評価することである。 本年度は、(1)IPSバックボーンネットワークのモデル化および問題設定、(2)フロー配置アルゴリズムの提案、(3)アルゴリズムの性能評価、(4)成果発表、を行った。 目的関数としては最大リンク利用率を採用した。この目的関数が最小化されるように各フローを配置する。ただし、1つのエッジノードの組の間には高々1つのフローが配置されるものとし、各フローの容量はある値の範囲からランダムに同確率で決定されるものとする。 提案した各フロー配置アルゴリズムの概略は次のとおりである。まず、初期のフロー配置を決定する。次に、最も利用率の高いリンクに着目し、そのリンク上を流れているフローを選択する。そのフローの新しいパスを再計算し、その新規パス上に再配置する。このような操作をあらかじめ決めておいた回数実行する。本研究では、最も利用率の高いリンクから一つのフローを選択するためのアルゴリズムとして2種類を考案し、選択したフローの新しいパスを計算するためのアルゴリズム(フロー配置アルゴリズム)として3種類を考案した。 評価の結果、フローを選択するアルゴリズムとしては、フローの容量によらずランダムに選択する方法が良好な性能を示した。また、フロー配置アルゴリズムとしては、全ての配置可能なパスのなかから最大リンク利用率特性が最も大きく改善するようなパス上に当該フローを配置するアルゴリズムが良好な特性を示した。
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