本研究では、大規模空間の高品質画像情報への適用を目的として対象シーンをおおまかに遠景・中景・近景の3層程度に分割する画像モデルを提案し、それぞれに適した構造化手法の詳細な検討を行っている。本年度は主として、平成14年度に提案した多次元画像情報の階層的構造化手法およびこれに基づく画像表現モデルにより、大規模空間の高品質画像情報を対象として実時間レベルの品質調整を実現する映像システムの実証的検討を行った。 具体的には、大容量データを保存可能な蓄積装置を利用し、大規模空間の高品質画像情報を対象とすることにより、多次元画像情報の階層的構造化による品質調整の有効性を確認した。とくに、中景から近景で奥行きが動的に前後する対象についても、高品質かつ高機能な画像表示装置の上で、品質を連続的に変化させながら最適品質での表現が可能となることを示した。 また、このような大容量データを分散ネットワーク上で効率的に共有する通信方式の確立のため、実時間レベルでの品質調整手法についても詳細に検討を行った。FFTアルゴリズムを構造化された多次元画像情報に適用することにより、取得された画像群を統合的に変換し所望の品質の画像を高速に生成することが可能となった。あわせて、本手法は高速化のみならず生成画像の品質向上にも大きな効果を与えることを明らかにした。 以上のような大規模空間の高品質画像情報を対象とした実証的検討は、本画像モデルに基づき画像情報の柔軟な品質調整を可能とする映像システムを分散共有通信基盤へと展開する上で必須のものである。
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