研究概要 |
資材の調達から生産,物流,販売までのサプライチェーン全体を対象とした最適化が注目されている.しかしながら,対象となるサプライチェーンの範囲が大規模になるに従い,システム自体も大規模で複雑なものとなり,全体を対象としたモデル化や最適化が困難となる.このような問題を解決する方法として,受注や生産に関する意思決定をできる限り分散化された要素で並列的に行うという分散協調型の並列最適化システムの実現が強く要請されていた. 以上の背景から,本研究では,サプライチェーンを対象とした生産計画,並びに生産スケジューリング問題に対する分散型最適化システムのプロトタイプを開発することを目的として,以下に示す研究を行った. 以下にその内容と得られた知見を示す. 1)多工程生産システムのモデル化と最適化 鋳造,熱間圧延,冷間圧延,および製品倉庫から構成される多工程の非鉄圧延工場を対象として,資材調達計画,生産スケジューリング,および受注出荷計画のサブシステムから構成される分散型サプライチェーン最適化のモデル,及び分散協調型の解法を開発した.開発した解法は,従来までの階層構造を有する解法と比較して,劣らない性能を有することを確認した.また,価格変化が大きい場合,提案手法はサブシステム間での双方向の情報交換により,従来法に比べて優れた解を導出できることを示した. 2)物流搬送システムとモデル化と非同期最適化 物流搬送システムを対象として,複数の分散要素が巡回経路長の最短経路を作成するという分散協調型の非同期経路計画最適化システムを開発し,複数のプロセッサから構成される並列計算機に実装することにより,非同期最適化アルゴリズムの大幅な計算時間短縮効果(約12%)を示した. 今後の課題は,非同期最適化における情報交換方式の検討,および非同期アルゴリズムを用いた分散型最適化システムによる最適化効果の検証を行うことである.
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