研究概要 |
本研究の目的は,非常に小さな体長でありながら優れた音源定位能力をもつヤドリバエの聴覚器官に着目し、この構造を適切にモデル化、一般化した新しいセンサ構造を導入することにより,従来のマイクロフォンアレイ技術では困難な超小型音源定位センサの実現を目指すものである。具体的には予備実験を踏まえ,新たな音源定位センサ構造の設計理論の確立と,センサの試作・実験による検証までを目標としている。本年度の成果は以下の通りである。 1)ジンバル型振動板の設計 ヤドリバエの鼓膜の中央支持型振動板構造を2次元的に拡張したジンバル型振動板構造を提案した。また、センサのダイアフラム領域を質量、ジンバル部のビーム、リングをばねと考える振動モデルに基づき、センサの各部形状パラメータと、センサの同相振動/逆相振動の共振周波数の関係式を導出した。また、これらの共振周波数間での、センサの運動方程式に基づき、センサの3つの振動モードの振動変位から、音源方向を検出するアルゴリズムを構築した。 2)センサの試作と音源定位実験による原理の確認 リン青銅箔をエッチングにより加工し、厚さ30μm/直径21.6mmのジンバル型振動板を試作した。また、これを用いた実験により、本センサにより音源定位が可能であることを確認した。 3)半導体微細加工によるセンサの設計 音声周波数帯域をターゲットとし、半導体微細加工によるセンサの実現を目指して設計を行なった。具体的には、A)表面マイクロマシニング、B)Niの無電解メッキ、の2つのプロセスにより静電容量型のセンサを設計、試作した。設計にあたっては1)前述したモデルを用いたほか有限要素法も用いて各形状パラメータを決定し、振動版周辺に壁を配置したり背面に音響孔をあけることにより、感度低下を防ぐ構造を導入した。
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