本研究は移動体通信、レーダの分野で応用されている超解像法の一つであるMUSIC法に着目する。MUSIC法は受信アレイに到来する平面波からその到来方向、位置を高精度に推定する手法であり、アレイ遠方の波源に適用可能であった。この手法を送受信アンテナを独立に移動させるアレイ近傍を対象とする地中レーダ計測全般に適用できれば、本分野の更なる発展が期待できると考えた。本年度は、以下の二点について検討を行った。 1.坑井間計測により、坑井間に挟まれた空間内における散乱体の位置推定法 2.地表近傍における地雷等の位置推定法 まず、1では計算機シミュレーションによる、埋設管等の波長に対しある程度の大きさを有するターゲットに対する本アルゴリズムの適用範囲について検討し、金属埋設管では0.3波長程度、空洞埋設管については0.4波長程度の半径の埋設管に対し、位置推定可能であることを示した。また、6m×6m×2.5mの埋設間探査用フィールドを作成し、実際に実験を行った。しかし、作成フィールドの均質性が十分でなく、実用的なデータ取得は困難であった。土壌の埋め戻しによる不均一が原因であり、時間経過とともに均質になることがわかっているため、来年度本格的な実験を行う。この代替実験として、水槽を用いたモデル実験により本アルゴリズムが実験的に有効であることを示した。 2では、地雷を対象とした地表での送受信アレイによる高精度推定技術の開発が、国際的に切迫した状況であることより、来年度の予定を前倒しして研究した。計算機シミュレーションにより、円形送受信アレイ配置が高分解能でクラッターの影響の少ないことを確認した。これにより、60cm四方の地表近傍の探査に対し、送受信アンテナ間隔を固定し地表を細かく広帯域に計測する従来の手法に比べ送受信アレイにより単一周波数で計測する手法が、高速かつ高分解能に探査可能である可能性を示唆した。
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