研究概要 |
本年度は,(1)ポーリング制御による短冊状高分子圧電素子の作製,(2)高分子超音波トランスデューサの高性能化,(3)収束型高分子超音波トランスデューサの開発と軸受けの転動疲労評価への応用,を主な研究項目として研究を行った.以下に,得られた研究成果について述べる. (1)前年度作製した分極処理システムに直径約φ0.1mmの対向電極を取付け,電界の強さを時間的に制御することにより高分子圧電フィルム内に分極分布の作製を試みた.実験では,0.1mm×10.0mmの短冊状超音波素子を同じ高分子圧電フィル上に複数作製し,これらの素子の特性を評価した.その結果,フィルム面内に任意の分極方向分布を作製することが可能であり,分極、方向により受信波の極性も重み付けできることを実証した.また,0.1mmの素子間隔まではクロストークが発生しないことも確認した. (2)超音波トランスデューサを構成する電極や接着層の材料や厚みがトランスデューサの周波数特性に与える影響を,トランスデューサ内における弾性波の伝搬シミュレーションにより解析した.そして,実際に試作した超音波トランスデューサの周波数特性との比較を行った.その結果,任意の周波数特性を有するトランスデューサ作製のための条件(構成材料の音響インピーダンスや厚み,電極面積)が明らかとなった. (3)高分子圧電フィルムを積層化し凹面に成形することにより,7MHzを中心とする広帯域な周波数特性を有する収束型超音波トランスデューサを作製した.そして,電極を漏洩レイリー波用と直接反射波用とに分割することにより,互いに干渉することなく漏洩レイリー波の音速を高精度に測定することに成功した.その応用として,稼働時間の異なる深溝玉軸受の疲労評価に適用した結果,稼働時間による音速の差異が見られ,提案手法の有効性が実証された.
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