研究概要 |
鉄鋼メーカなどにおいては,鋼管(パイプ)の出荷に際し,パイプの長さを計測する必要があるが,これまで2人の作業員が巻き尺によって長さ測定を行っており,人的コストがかかるだけでなく,巻き尺のたわみ等により1cm程度の誤差が生じるなどの理由から,低コストかつ高精度な管長計測手法が望まれている。このようなことから,本研究では(1)加速度ピックアップ及び(2)音響センサを用いた管長計測システムの開発を目的として研究を進めてきた。 今年度はまず,これまでの研究におけるノウハウを活用すべく,(2)の音響センサ方式を主として研究を進めた。具体的には,まず,開口端を有するパイプにおいては開口端補正を行う必要があるが,この補正値は理論的に求まらないだけでなく,パイプと床の距離によっても値が変化するため,補正を行うことが非常に困難である。そこで,管の一端に蓋をした場合としない場合の二種類の管内音圧データを利用し、正確な開口端補正値と管長を同時に高精度計測するシステムを開発した。次に,工場内では絶えず操業に伴う外乱音が管内に入るため,これを考慮し,音圧データの中から適切なデータウインドウを自動的に選び出す方式を考えると共に,音響センサの最適な配置法を考えることにより,騒音場でも高精度計測が行える計測システムを提案した。 また,(1)の加速度ピックアップ方式に関しては,種々のパイプを叩いたときに生じる表面波の周波数分析を行うことにより,(音響定在波とは異なる)表面波による定在波に関する知見を得ることができた。 来年度は,(1)に関しては今年度の知見をもとに,パイプの表面波を利用した管長計測システムを考え,(2)に関しては,管内に生じる温度分布を考慮することにより,より実用的な管長計測システムの完成を目指す予定である。
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