研究概要 |
本研究の目的は,時間-周波数解析を導入して筋音図(Mechanomyogram)の連続的な変化を解析し,運動単位活動様式の経時的変化の記述を試みることであった.また,本申請の期間内では,特に筋疲労を伴う持続収縮時の筋音図を対象に,筋音図を筋疲労の評価指標とするにあたって提案する解析法が有効であるかどうかを明らかにすることを目指した. 本年度は,まず,被験者に上腕二頭筋の等尺性筋収縮を目標筋力(最大随意筋力の20%(20%MVC)と80%(80%MVC))を維持できなくなるまで持続させ,その際に小型加速度計を用いて上腕二頭筋筋腹から筋音図を導出,記録した.そして,記録した筋音図の振幅(RMS値)と平均周波数の経時的変化を分析するにあたって最も適していると思われる時間-周波数解析の手法を模索した.その結果,ウィグナー変換法は同時に複数の周波数成分を持つ筋音図の分析には適さないことを確認した.また,ウェーブレット変換法は周波数に依存した重みが存在し,推定したスペクトルの平均周波数が信号本来の平均周波数と差異を生じることを確認した.これらに対して,短時間フーリエ変換法は,時間分解能と周波数分解能を同時に高くできないという欠点があるものの,推定したスペクトルの平均周波数は信号本来の平均周波数と一致することが確認された.そこで,短時間フーリエ変換法を用いて持続収縮時の筋音図の時間-周波数解析を行った結果,20%MVCではRMS値が収縮開始後一旦緩やかに減少した後著しく増加し,平均周波数は収縮開始当初上昇したが,その後ほぼ一定を保った.一方,80%MVCではRMS値が連続的に減少し,平均周波数は一旦上昇した後,一転して下降した.このような筋音図のRMS値と平均周波数の変化は筋疲労に伴う運動単位活動様式の変化を反映しており,筋音図による筋疲労のモニタリングの有用性が示唆された.
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