研究概要 |
物体表面の実際の粗さと人間が視覚で感じる粗さとは,物体の材質や色彩によって異なったものになることが,経験上わかっている.そこで,工業分野においては,塗装面,紙,金属板などの品質向上のため,人間の視覚に基づいてその表面粗さを非接触で評価することが注目されている.現在,一般的には被検面からの正反射光の光強度を検出することで,表面粗さの計測をおこなっているが,この手法だと,被検面の材質や色彩の影響を受けるため,人間の視覚に基づいた表面粗さの評価はできない. さらに,近年の微細加工技術の進展にともない,ナノメートルオーダーでの表面粗さの計測が要求されつつある.そこで,本研究では光強度のみでなく,回折現象やモアレトポグラフィ法を利用して,被検面の微細形状をナノメートルオーダーで計測するとともに,人間の視覚に基づき表面粗さの評価をおこなう新規的な非接触表面粗さ評価システムを開発する. 視覚に基づいた表面粗さの評価をおこなうための基礎的な研究として,樹脂面を観察したところ,人間が視覚で感じる表面性状は,被検面の半透明さに依存しているようであることがわかった.ところで,三次元形状計測法の一種に,パターン投影法と呼ばれる手法がある.これはあるパターンの影を被検面に投影し,その変形具合から三次元形状を算出するものであるが,我々は人体の形状を計測する際,コントラストが著しく低下することを見出した.そこで,あるパターンの影を樹脂面に投影し,そのコントラストを測定することで樹脂面の表面粗さを評価することができるのではないかと考えた.様々な粗さの樹脂表面に対して実験をおこなった結果,樹脂面に投影されるコントラストを測定することで,樹脂の表面粗さを評価できることがわかった 平成16年度は,測定サンプルとして表面粗さが異なった半透明の樹脂を用い,格子像を投影する際の入射角依存性を調べた.その結果,入射角を小さくするほど,表面粗さに対するコントラストは,大きく変化することがわかった.さらに,測定サンプルの表面から光を照射し,その透過光強度も測定した.この実験結果から,表面粗さの異なる樹脂表面に格子パターンを投影したとき,格子像のコントラストと樹脂面の透明度との間には関係があり,コントラストが大きいほどその樹脂の透明度は低いことが,実験的に確かめられた.
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