本研究では、申請者がこれまでに開発してきた光音響顕微鏡システムに表面プラズモンによって励起する熱波を組み合わせた光音響顕微鏡システムの改良型ともいえる新規な熱波顕微鏡システムを開発することを目的とする。表面プラズモンの励起には取り扱いが簡単であるKretschmann法を用いることにした。表面プラズモン励起のための臨界角を求めるシミュレーションを行い、厚み50nmの銀薄膜の場合、レーザ光の入射角が43.7度で表面プラズモンの励起が最大になることを明らかにした。これを確かめるために実際にプリズムに銀を真空蒸着し、全反射減衰法(ATR法)を用いて実験を行った。厚み50.2nmの銀薄膜の表面プラズモンが43.6度で最大に励起することを実験的明らかにした。表面プラズモン励起によって生じた熱源を光音響信号の生成に使うためにレーザ光をメカニカルチョッパーで強度変調し、プリズムに取り付けられる特殊な光音響セルを作成し、高感度マイクロホンで光音響信号を測定した。その結果、従来の方法に比べて光音響信号振幅を最大20倍程度増強にできることを明らかにした。この結果より、表面プラズモンによって銀薄膜内に強力な熱源を形成できたものと思われる。さらに、マイクロホンに変わるセンサー開発の前段階としてPVDF膜に関する信号検出の基礎実験を行った。PVDF膜の厚み、試料への固定方法、カップリング材について検討し、黒鉛の信号を測定できることを明らかにした。
|