研究概要 |
非ホロノミックシステムに代表されるある種の非線形システムは、一般的に考えるような連続なコントローラでは制御できないにも関わらず不連続なコントローラを用いると制御可能になるという極めて興味深い性質を持っており、車輪型移動ロボットや宇宙ロボットなどの多くの実用的な問題を含んでいる。 本研究の目的は、この「不連続性の導入」を理論的に整理し,設計論として工学的に確立することであり、本年度において以下の2つの重要な結果が得られた。 (1)前年度までに、四輪車両に代表されるごく単純な非ホロノミックシステムに対して、Nonsmooth Lyapunov Functionを用いた不連続フィードバック則の設計法を提案していたが、これをさらに「一次複数チェイン構造」という複雑な可制御性を持つシステムまで扱えるように拡張した。これにより、3次元宇宙ロボットの姿勢制御や、我々が提唱している三又ヘビ型ロボットの制御問題にも適用できるようになった。これは、単に扱える対象が増えたというだけでなく、「システムの可制御性構造と、それに対して必要な不連続性の導入のしかた」についてより深い、本質的な理解が得られたことを意味している。この成果は2003年12月に開催されるIEEE Conference on Decision and Controlに投稿中である。 (2)三又ヘビ型ロボットについて非線形可制御性の理論に基づく詳細な運動解析を行い、所望の推進や回転運動を発生させるためにどのように足関節を動かせばよいか、というメカニズムをほぼ完全に解明した。従って、あとはここで得られた知見を(1)と合わせて、いかにして不連続フィードバック制御器として実現するかを検討すればよい段階に到達したわけである。また、これまで三本の足に各1つと仮定していた関節数を増やし、より実用的な多関節三又ヘビ型ロボットのモデルとその制御方法を導出した。現在は実験用の試作機を製作中である。この成果は2003年5月に開催される計測自動制御学会制御部門大会で発表予定である。
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