研究概要 |
非ホロノミックシステムに代表されるある種の非線形システムは、通常の連続なコントローラでは制御できないにも関わらず、スイッチングや論理回路等の不連続な要素を含むコントローラを用いると制御可能になるという極めて興味深い性質を持っており、車輪型移動ロボットや宇宙ロボットなどの多くの実用的な問題にも見られるものである. 本研究の目的は、この「不連続性の導入」を理論的に整理し,設計論として工学的に確立することである。本年度は理論的、技術的側面から重要な下記の二つの結果が得られた。 (1)システムが可縮な集合値フィードバック則(CFB)により可安定であるための必要条件を導いた。CFBはある種の不連続なフィードバックを含むが、この結果、多くの非ホロノミックシステムは「たとえ不連続性を導入しそもそれがCFBに属すものであればやはり制御はできない」ことを明らかにし、さらに非可縮なフィードバックにより制御を可能にするための方針を示した。※可縮とは位相幾何学の概念で、集合が「穴を持つかどうか」といった性質を一般化したものである。 (2)本研究における斬新な応用例として提案していた三叉ヘビ型ロボットについては、三本の足がそれぞれ1リンクを有する最も簡単なモデルの試作機を製作して制御実験を試みたが、実は満足な動作が実現できなかった。そもそも三叉ヘビとは各足が床面から受ける摩擦力を推進力に変換する非線形メカニズムであると捉えられるが、この摩擦力が十分に得られないとその場で滑ってしまうのである。そこでこの現象を取り扱うために詳細な動力学モデルを導出して摩擦力の解析を行った。さらに各足に冗長なリンクを増設し、冗長性を利用して1リンクあたりにかかる摩擦力の負担を最小化することによって実用的な移動制御アルゴリズムを導出することに成功した。この成果は2004年5月に開催される計測自動制御学会制御部門大会で発表予定であり、またここで得られた知見を生かして第二号機を製作予定である。
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