研究概要 |
本研究では,体操選手の鉄棒運動を模擬した2つのリンクからなる劣駆動ロボット(Acrobot)に対して,逆上がり倒立,大車輪運動,宙返り着地を実現する特異姿勢の存在しない制御則の開発に成功し,日本国内で,劣駆動アクロバットロボット実機による振り上げ・安定化制御に初めて成功した.本年度の主な研究成果としては,以下のものを挙げる. 1.リアプノフ安定性理論に基づき,エネルギー制御法によるAcrobotの振り上げ制御則を開発し,エネルギーの収束性とAcrobotの動きに関する解析を行った.その解析により,Acrobotの振り上げ制御が可能となる機械パラメータと制御パラメータに関する条件を与え,Acrobotの動きを理論的に解明するとともに,エネルギー制御法がAcrobotの振り上げ制御に有効であることを理論的に示した. 2.Acrobotの浮遊相の姿勢制御問題に対して,その加速度入力による姿勢制御の設計法を開発した.制御則における特異点は存在せず,収束は大域的に保証されることがその開発した制御則の特徴である. 3.並列型二重倒立振子を対象として,リアプノフ安定性理論に基づき,エネルギー制御法による振り上げ制御システムのエネルギーの収束性を詳細に解析した.その解析により,並列型二重倒立振子の振り上げ制御が可能となる条件を明らかにした.さらに,両振子の動きの安定性を不変集合の安定性の観点から明らかにした.上述の解析から,並列型二重倒立振子の振り上げ制御にエネルギー制御法が有効であることを理論的に明らかにする. 4.ロバスト制御理論の中核としてのH∞制御理論を実世界の対象に適用するため、低次元H∞制御器問題を研究し,H∞制御器次元の統一的な上界を与えた.また,H∞制御問題が可解であるとき,一般化プラントが不安定な零点を持てば,必ず低次元制御器が存在することを明らかに示すと共に,そのLMIによる設計法を与えた.これらは,挑戦的な低次元H∞制御器問題に新しい視点および成果を与えたものと考えられる.
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