本研究は制御系における双線形行列不等式問題(BMI問題)に対し、効率の良い解法を与える研究である。BMI問題に対しては、すでに分枝限定法による厳密解法が提案されている。しかし、問題の大きさに対し計算量が指数的に増加するという問題がある。そこで本研究では、分枝限定法の計算を打ち切る指標である許容誤差に注目している。許容誤差を大きくすれば早い時間で計算を打ち切ることができ、計算速度の向上が期待できる。ただし、許容誤差を大きくすれば得られた解の精度は低くなってしまう。実際の制御対象の数理モデルを作る際には、モデル化誤差が含まれ、BMI問題の解の精度を上げても意味がないと考えられる。そこで本年度は、制御対象の数理モデルの精度と解の精度の関係、つまり、モデル化誤差と分枝限定法における厳密解の許容誤差の関係を調べた。 2つの誤差の関係を調べる方法として、厳密解の許容誤差を制御対象のモデル化誤差として扱う方法と、制御系への外乱として扱う方法の2つが考えられる。本年度は、前者のモデル化誤差として扱う方法に注目した。具体的には、BMI問題に対する感度解析を用いて、モデルのパラメータの誤差と最適解の誤差の関係を調べた。BMI問題の感度解析を行うのは実際には難しいため、BMI問題の緩和問題であるSDP緩和問題の感度解析を用いて関係を調べる手法を提案した。しかし、実際にBMI問題のパラメータを変動させて厳密解を求めたシミュレーション結果に比べ、提案した手法から得られた解の変動の値の見積もりが大きすぎるという結果を得た。この問題は来年度以降に解決する予定である。
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