研究概要 |
多関節多指ハンドによる物体操作では,操作対象と外部環境との摩擦や衝突などの相互作用が,指先と操作対象との間に滑りを発生させることがある.この指先滑りは計測されなければ,操作対象と環境との接触状態の認識を妨げ,安定な把持を困難にする.一方,指先滑りの方向や大きさが計測できれば,指先滑りを生じさせるための指の動作計画と計測を組み合わせることによって,指先滑りを積極的に利用した操作も可能になる.本研究の目的は,滑り動作の計画と滑りの計測を実時間で行うことにより,滑り動作を実現することにある.本研究では,ノイズの多いセンサ信号から滑りを検出/計測する式を導出し,対象物の位置と姿勢を計測する実時間視覚システム,関節角度を計測するエンコーダ,および指先力を計測する力センサを併用して,実際に指先滑りを検出している.但し,ハンド作業における操作対象の視覚計測では,カメラをハンドの外側に配置した場合,指や障害物による隠れが生じて対象表面の視覚情報が十分獲得できず,また,一方向からの計測の場合,カメラ奥行き方向の誤差が位置姿勢計算の結果に大きく影響を及ぼすという問題点があった.今回,これらの問題点を解決するために,掌にカメラを搭載してハンド内側からの視覚情報を獲得し,その情報を外部カメラからの情報と融合して計測を行った.掌カメラでの計測では,指や障害物による隠れがほとんど生じないため,対象物表面の視覚情報を得やすい.また,ハンドが移動する場合,カメラも把持物体も一緒に移動するので,把持物体を画像内に収めるためのカメラ自体の回転運動やズーム等は必要ない.さらに,外部カメラの視線と掌カメラの視線とが平行にならないようにカメラを配置すれば,奥行き方向の誤差の影響を互いに軽減することができる.実際に,対象物体をハンドに把持/操作させて計測実験を行い,提案手法の有効性を確認した.
|