研究概要 |
高レベル放射性廃棄物最終処分において,天然バリアと人工バリアの間に設置されるとされている緩衝材に関してはNa型ベントナイトが念頭に置かれて研究が進んでいる.高レベル放射性廃棄物に処分においては,(1)地下深度が非常に深い=高圧下,(2)一時的とは言え,高温になる可能性が大,(3)処分が長期に及ぶため,物質間の相互作用がありうるため,これらについて充分に検討する必要がある.緩衝材についても,高圧下,高温下での変質,天然に存在する物質,あるいは吹付けコンクリートなどに代表される人工構造物中の物質との相互作用などについて充分に検討しておくことが必要である.そこで本研究ではNa型ベントナイトを用い,乾湿および高アルカリの条件下でその変質メカニズムを捉えていくのが本研究の目的である. 研究初年度は,まず,過去の研究事例より,ベントナイトの主成分であるモンモリロナイトが水分の影響を受けることが分かっているため,乾湿による影響を調査した.XRD測定(X線滑回折測定)の結果,Na型ベントナイトは2層の水分子層を含んだ構造のピークがなくなり,層間に水分子なしの状態の構造あるいはイライトのピークを示すのピークが現れた.しかしながら,この現象の大半は可逆的な変化で,再び空気中に放置すると,時間はかかるが元の状態に近づくことが判明した. 次に,Na型ベントナイトはアルカリ溶液下に浸漬した場合,pH11以上で変質が起こり,Ca型化やモンモリナイトが消失することが知られていることから,本研究では,強アルカリ溶液下で,かつ80℃という比較的高い温度の環境下において一定期間浸漬させた試料に対して,XRD測定および膨潤試験を実施した.高アリカリ溶液にベントナイトを浸漬することにより,1層と2層間での水分子層の脱離や吸着が起こり,また,膨潤力も低下した.これより,ベントナイト試料の一部は,高アルカリ環境下において構造変化を起こすことが判明した.
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