寒冷地におけるコンクリート構造物はその気候的な条件(凍結融解作用)により、コンクリート組織の膨張、緩みあるいはそれに伴うひび割れの発生や崩壊として特徴づけられる、特有の凍害劣化を受けやすい環境にある。一方で、近年、凍結防止剤などの塩化物が存在する環境下では凍結融解との複合作用により劣化が促進され、表層2cm程度までがフレーク(薄片)状に剥げ落ちるスケーリング劣化(表層はく離)が顕在化してきている。さらに劣化が進行した段階では骨材が露出し、著しい場合には、表層数cm程度のコンクリート組織の剥落を招く。そして、外部劣化因子からの保護層としてのかぶり(表層部)コンクリートの機能が完全に低下し、内部の鉄筋が腐食するケースも多数報告されている。そこで本研究は、凍結融解作用を受けたコンクリートの物質透過性を明らかにするとともに、鉄筋腐食との関わりについて検討することを目的としたものである。本年度は、コンクリートの凍結融解劣化のレベル(程度)が、塩化物および空気などの物質透過性に及ぼす影響について検討した。得られた結果の概要を以下に述べる。 1.凍結融解作用の増加に伴いコンクリート表層部の塩化物イオンの透過性は、大きく増大する傾向にある。また、コンクリート供試体の劣化面より、3cmの位置での塩化物イオン透過量は、5cmの位置のそれより著しく増加する傾向が確認された。 2.塩化物イオンの透過量は、コンクリート供試体の相対動弾性係数が80%の時点においても100%の時点(凍結融解作用を受けていない健全な状態)と比較して1.5倍程度大きくることが確認された。これは、凍結融解作用を受けたことにより、コンクリート表層部の組織が脆弱化したものと考えられる。そして、凍結融解作用による変状の初期段階でも塩化物イオンの透過性は大きく影響を受けるものと思われる。 3.凍結融解作用を受けるコンクリートの透気性は、塩化物イオンの透過性とほぼ同様の傾向が確認され、凍結融解の進行に伴い透気係数は著しく増加することが分かった。
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