研究概要 |
兵庫県南部地震によって多くの構造物が被災したのを契機に,橋梁構造物の耐震設計では荷重低減係数を用いて橋脚の要求耐力を推定する,じん性設計法(荷重ベース設計法)が導入されるようになっている.荷重低減係数の的確な推定は構造物耐震性能に重大な影響を及ぼすと考えられる.本研究はこのような背景の下に始められたものであり,以下のような成果が得られた. 1)荷重低減係数の推定に際しては,現在,経験則である周期依存性のないエネルギー一定則が荷重低減係数の推定に用いられているが,荷重低減係数の固有周期依存性は大きく,またばらつきも非常に大きい.このことからばらつきを考慮した荷重低減係数の推定式を提案した.これにより,地震時の非線形応答変位を考慮した設計が可能となった. 2)荷重低減係数の推定式から,エネルギー一定則の適用性のよい固有周期帯を評価した結果,I種地盤およびII種地盤では0.5秒付近,III種地盤では1〜1.2秒付近となることが明らかになった. 3)構造物の線形・非線形地震応答は構造物の減衰定数に敏感であり,非線形応答と線形応答の比である荷重低減係数もこれに大きく影響を受けることが明らかになった. 4)既往の研究で仮定されているように,線形,非線形応答における減衰定数をともに5%と仮定した場合には大きな荷重低減係数が求められる傾向があることが判明した.また,線形応答の解析では構造物の粘性減衰と地震時における履歴減衰の影響を考慮した減衰定数を,非線形応答の解析では構造物の粘性減衰のみを考慮した減衰定数を仮定した場合が,荷重低減係数が小さく求められることになることがわかり,このような減衰定数の影響を考慮した荷重低減係数の推定式の提案を行った.これに荷重低減係数のばらつきを考慮することで,要求耐力の過小評価を防ぐことができることがわかった.
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