地盤工学や粉体工学の分野で扱う粒子の多くは不規則な形状を有しており、この粒子群の力学挙動については、多くの要素試験等により検討されている。本研究は、このような不規則形状粒子群の力学挙動を、粒子個々の運動から定量的にシミュレートする事を目的として、(i)実実験などに良く用いられる標準砂などの3次元形状の実測と、その実データのカタログ化、(ii)個別要素法解析を行う際のモデル化手法の開発と検証、などを行う。 本年度は、(ii)に関して、不規則形状粒子を任意の精度でモデル化できる動的最適化法を開発し、2次元及び3次元モデルについてその検証を行った。本手法は、計算効率の良い円または球要素を複数剛接して不規則形状粒子を表現する解析手法を前提として、その各要素の最適半径および最適配置を仮想的な運動方程式によって得るという独創的な手法である。その有効性を検証するため、粉砕ガラス粒子の3次元形状をレーザーによる可視化手法LAT(Laser Aided Tomography)によって取得し、そのモデル化粒子よりなる供試体の単純せん断シミュレーションを、同材料を用いた中1空ねじりせん断実験の結果と詳細に比較した。その結果、排水・非排水、密づめ・ゆるづめ試験体とも、せん断挙動およびダイレタンシー挙動全般にわたって、解析と実験で定量的な比較が可能であることを実証した。ただし、間隙比特性については若干差が現れ、モデル化の改善、あるいは高精度化が必要であるとの結果を得ており、これは次年度に詳細に検討する予定である。 一方、標準砂などの3次元形状の実測に関しては、大型放射光施設SPring-8の利用を次年度初頭に計画している。これまでの予備実験によれば、本施設を用いることで高精度な3次元実測データの取得が可能となることが確かめられており、これらのデータ及び、デジタルマイクロスコープを用いた研究室レベルの形状取得法を組み合わせて、同分野での研究者の間で共有可能なデータベースの構築を行う予定である。
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