研究概要 |
研究期間の初年度である本年度は,まず第1に本研究の遂行に不可欠な粘性土の微小ひずみ領域における変形特性を把握することに特化した室内三軸試験装置・方法に開発を重点的に行った.そして第2に,現在までほとんど研究例の無い,極めて小さな軸ひずみ速度で実施した排水三軸試験結果をもとに,粘性土の微小ひずみにおける排水条件下のヤング率を測定・評価することを試みた. まず試験装置・方法の開発については,軸応力・軸変位の載荷に高精度ダイレクトドライブモータ(商品名:メガトルクモータ)を採用し,バックラッシュが極めて小さい減速機ならぴにボールスプラインネジと組合わせることによって,高分解能での軸方向変位の制御・計測を可能にした.また,設定可能なモータの回転速度を下回る小さな軸ひずみ速度が必要な場合には,時間に対して微小変位を繰返し段階的に載荷するよう,モータ制御のソフト面で工夫することでこの問題点を解決した.さらに,ペデスタル内部に高感度小型圧力変換機を設置し,二重負圧法によって供試体ならびに供試体周辺の飽和度を高めることで,三軸試験において最も重要な測定値の一つである間隙水圧の微小変化を正確に把握することに成功した. 次に排水条件下のヤング率については,同一条件下で作成された均質な粘土供試体に対して,排水条件をほぼ満たす広範囲な軸ひずみ速度(0.00006〜0.002%/min)での一連の排水三軸圧縮試験を実施した.この結果から,排水せん断試験開始直前のクリープ速度の高々1.2倍程度の軸ひずみ速度で実施した試験では,載荷初期においてほとんど偏差応力の増加が見られず,粘性土の微小ひずみ域における排水せん断時の変形挙動はクリープの影響によって大きな速度依存性を有し,クリープの影響を考慮しない限り,ひずみ速度によらない共通のヤング率を得ることができないということが分かった.
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