研究概要 |
研究期間の2年目である本年度は,まず第1にベンダーエレメント(以下BEと略記)試験システムを構築し,昨年度構築した三軸試験機のキャップとペデスタルにBEを取り付け,三軸試験中における任意の時点においてBE試験の実施を可能とした.そして第2に,BE試験結果の解釈に関して,未だに国際的なコンセンサスが得られていないせん断弾性波の伝播時間同定法に関して豊富な実験結果をもとに検討した.また第3に,粘性土の微小ひずみ域におけるヤング率(以下Eと略記)とせん断弾性係数(以下Gと略記)の相関について詳細な検討を行った.従来利便さを理由に土供試体を等方弾性体を仮定することが多かったが,より実質的な直交異方弾性体と仮定した際に必要となる各種弾性係数に関する考察も行った. まず,BE試験システムについては,本年度の設備・備品費で購入したデジタルオシロスコープと現有のファンクションジェネレータならびに圧電素子用の高容量アンプを組合せ,多様な周波数ならびに波形,単独波と連続波,広範囲な振幅での送信電圧を供給できるようにし,従来のシステムに比べて多様な試験が可能となった. 次に,Gの伝播時間同定法については,Near-Field Effectsと呼ばれる伝播距離が小さい場合にせん断波の到達開始の判断を困難にする現象を踏まえたうえで,送信電圧の送信開始時とせん断波の到達開始時を結ぶべきと考え,BE試験結果において,この伝播時間を見出す経験則的な方法を提案することに成功した. 最後に,粘性土の微小ひずみ域におけるEとGについては,本試験より得られた排水条件下での鉛直方向のE,非排水条件下での鉛直方向のE,鉛直面内におけるGに関して豊富な実験結果をもとに詳細な検討を行った.その結果,これらの弾性係数と測定時の間隙比の関係は,粘性土の代表的特性であるe〜logp'関係と同様に,正規・過圧密状態のそれぞれにおいて片対数紙上で線形関係にあり,この相関を用いた関係式を導くことに成功した.また,マイクロメカニクスモデルによると,これらのGとEの相関については等方弾性仮定時と同様に1:3の関係にあると考えても差し支えないことが得られた.
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