研究概要 |
(1)交通振動に含まれるレイリー波の位相速度および距離減衰特性を現場でリアルタイムに確認し,最適な計測器配置を現場で選択可能な計測処理システムを開発した.システム開発は,現有する微動観測システムを改修・増設することで実施された.この際,交通振動の同時多点計測(アレイ計測)に不足するA/D変換ボード,フィルタ,センサおよびケーブルを購入した.また,システムを駆動・管理する計測ソフトウェアを,現有の微動観測システムに対応するそれを改造して作成し,計測システムに搭載した.なお,実際の現場計測では大量のデータを記録・保存する必要があることから,大量のデータ記憶媒体(MO, CD-R)を購入した. (2)上記(1)のシステムを用いて,ギョルジュク(トルコ),バンコク(タイ),モンテンルパ(フィリピン)および日本国内数地点における地盤構造が既知の地点で,主として一般車両による交通振動のアレイ計測を行い,それに含まれるレイリー波の位相速度および距離減衰特性を求めた.計測された位相速度について,高次モードの影響を考慮した逆解析を行って,表層地盤のS波速度構造を推定した.推定された構造は,既往のPS検層等の地盤調査結果および別途実施された微動のアレイ観測から求められたS波速度構造と良く一致した.このことは,主として一般車両による交通振動のアレイ計測に基づいて表層地盤のS波速度構造を精度良く推定できること,すなわち提案手法の有効性をある程度示している.来年度は,本手法を表層地盤のQ値構造の同時同定に拡張し,手法の有効性をさらに確認するとともに,一般車両以外の種々の交通振動に対する本手法の適用性について検討する予定である.
|