研究課題
汽水域を、流域から沿岸までの自然システムの一部ととらえる研究の方向性から、河口処理を見直した。汽水域の砂州のカブトガニ産卵地の保全については、大分県中津干潟の舞手川河口の海岸計画の調査研究の結果、工法と計画の見直しが行なわれた。従来は、治水上の理由として精査されずに除去されてきた河口砂州をモニタリングした結果、この規模のものであれば掘削を行なわなくとも支障がないことを確認した。また、海岸護岸や河川堤防が砂州や砂浜を埋める位置に建設されるのを見直し、背後地の安全度は保障したうえでの、引堤が一番合理的な方法であるとの提案が採択された。河口処理の際には、従来の治水上の理由であっても十分に管理を検討するデータが不足してきたため、環境保全や水産生物のためには、まず、周年の河口の地形変動は最低限モニタリングすべきであると考えられる。対象地の波・流れ環境の数値計算結果によれば、河口処理や埋立が過度に進むと、汽水域の砂州背後などの静穏域が失われる。その結果、回遊魚や稚魚・幼生が生息しにくい物理条件になると考えられる。海域と河川にいままで分かれていた学会活動の統合化が必要と考えた。このテーマに関し、日本水産学会のシンポジウム「内湾河口漁場の崩壊過程」を、昨年度に引き続き今年度も企画・開催した。本研究で得られた知見は、海の再生や河口の環境管理に関する政府のガイドラインの作成の参考資料への活用や、河口域の再生や修復(千葉県の三番瀬や有明海・八代海、青森県、大分県、沖縄県など)のプロジェクトに実地に活かされつつある。河口都市の環境再生や防災の基礎研究として工学としてのシステム化も本研究の具体例での蓄積をもとに行いつつあり、社会還元も目指している。
すべて 2004
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水工学論文集 48
ページ: 1303-1308
海岸工学論文集 51
ページ: 1341-1345
第32回環境システム研究論文発表会講演集
ページ: 59-65
ページ: 383-389