研究概要 |
メソ気象モデルMM5,海洋モデルPOMを結合して,力学的・熱力学的海面境界過程を考慮したメソスケール大気海洋結合モデルを構築し,夏季成層期の伊勢湾において計算精度の検証を行った.潮位に関しては相関係数が0.96以上,RMS誤差17cm以下という実用レベルの精度が得られた.また,残差流の水平パターンや数日スケールの温度変化のような比較的大きな時空間スケールの現象に対しては,結合モデルの有用性を示すことができた.しかし,1時間毎の瞬間値としての精度は,流速,温度にそれぞれ数〜十数cm/s,数℃の誤差があり,まだ実用レベルの精度には達していない.流速,温度・塩分濃度の鉛直分布の観測値との大きな違いは,上層における鉛直渦動粘性係数・鉛直渦拡散係数の評価に大きな問題があることを示唆した. そこで,密度成層がほぼ鉛直一様になる冬季を対象として,鉛直渦動粘性係数・鉛直渦拡散係数に関する検討を行った.その結果,POMで従来使われているMellor-Yamada型の1.5次乱流モデルでは,リチャードソン数に基づいた1次モデルに比べて,鉛直渦動粘性係数・鉛直渦拡散係数共に過大評価傾向であることがわかった.また,Mellor-Yamadaモデルでは,運動量の鉛直混合が大きいために,エスチュアリー循環が十分に発達せず,高温の外洋水が十分に内湾に入りにくい状況となり,これが内湾水の水温過小評価の一因となっている.この様に,浅海域での鉛直渦動粘性係数・鉛直渦拡散係数の算出法は,局所的な鉛直混合のみならず,内湾全体の循環場に非常に大きな影響を与えることが明らかになった.Mellor-Yamadaモデルのクロージャー定数のチューニングが今後の大きな課題である.
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