研究概要 |
木曽川や淀川などにはワンドが多く観察される.これは,120年前にデレーケが施工した水制が変化したものである.ワンドは側壁に凹部を有する開水路乱流と捉えることができる.河川では洪水時にフルード数が増加することが知られているが,フルード数がワンドの水理特性に及ぼす影響はほとんど解明されていない.そこで,本研究において,流入フルード数を常流から射流まで変化させ,そこに発生する瞬間渦の挙動をPIV(Particle Image Velocimetry)を用いて計測すると共に,超音波波高計を用いて水面変動を計測した.その結果次のような結論が得られた.まず,時間平均された平均渦のスケールとパターンは流入フルード数が変化してもほとんど変わらないが,平均渦によるリターンフローの強度は増加することがわかった,続いて,流入フルード数の増加に伴い瞬間渦のスケールは減少するが,強度は増加することが実験的に解明された.よって,流入フルード数が増加すると,乱れ諸量も増加する.一方で,瞬間的な流れ場を時間平均して算出されるせん断層の横断スケールは流入フルード数の増加に伴い減少することも明らかとなった.これは,流入フルード数が増加すると瞬間渦の強度が増し,流体混合が激しくなるため,瞬間渦の変動が維持されず,移流に伴い変動特性が急激に変化することに起因すると考えられる.以上のように,フルード数の変化によってワンドの水理特性が大幅に変化することが解明されたが,瞬間渦のストローハル数は水理条件によらずほぼ一定の0.14であり,この特性は鉛直下向きに凹部を有する開水路キャビティー流れと同程度であることが解明された.
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