研究概要 |
広島湾において特に浮泥が厚く存在している呉湾において,7,8,9,11月の浮泥の堆積状態(厚さ),湿潤密度およびベーンせん断強度を測定し,季節的な浮泥の物理的特性の変化を明らかにした.また,実際に海底で生じている海底近傍の流速および濁度を連続測定(平成14年8月〜9月)し,夏期における流速および底泥の巻き上がり状態を明らかにすることができた. また,現地浮泥を用いて波や流れによる外力条件下での底泥巻上げ実験を行った.現地浮泥については,海底面に設置された沈降物サンプラーで採取された浮泥とアクリルコアサンプラーで柱状採取された浮泥について性状の比較を行い,水理実験に際しては,乱さずに採取されたアクリルコアサンプルと水路に敷き詰めた底泥のベーンせん断強度について検討を行った.その結果,波の場において巻き上がり量が急増する底面せん断力が明らかとなり,現地の底層流速と比較すると,平常時には波によって巻き上がりが生じていると推定された. 一方,広島湾における季節的な流動外力の変化を検討するため,地形が複雑で開口部を複数有する広島湾の境界条件として重要な3つの瀬戸(大野瀬戸,奈沙美瀬戸,音戸瀬戸)において,通年の潮位観測を行った.この結果,夏期に呉湾の潮位上昇が顕著であり,海水が停滞していることが推定された.上記の瀬戸に加え,柿浦験潮所(広島県)の潮位データを用いて,各期における広島湾の流れの3次元数値シミュレーションを行った.複数の湾口部における季節的な潮位差の変化によって,潮汐残渣流が異なっており、広島湾北部海域〜呉湾の流出・流入傾向が季節的に変化することが明らかとなった.
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