研究概要 |
(1)砂浜・干潟に生息する底生微生物の生物量と代謝活性量の現地調査 沿岸環境生態系モデルを開発する上で一番重要となるのは,継続的・信頼性のある環境調査データの取得である.そのため,申請の水質機器を用いた水質調査と並行して,瀬戸内海の代表的な干潟・砂浜に生息する底生微生物の生物量および活性量の現地調査を行った.微生物代謝活性の定量化には新たなフォスファターゼ(PHPP)活性測定を採用し,微生物量の定量化には微生物総量の推定が可能なATPバイソマス測定を採用した. (2)生化学的分類別の底生微生物の生物量と代謝活性量の数理モデル化 上記(1)で得られた現地調査データに基づき,個々の干潟・砂浜の生化学的な特性を踏まえた数理モデル化を行った.モデルパラメータとしては,生化学的環境因子として(1)で得られたPHPP活性量およびATP生物量,河川・海洋からの栄養塩供給,物理環境因子として波高,砂浜・干潟勾配,土壌・砂粒径,その他の環境因子として気温,水温,日射,溶存酸素量などを考えた. これらを基に微分方程式を導出し,微生物増殖・減少量曲線,微生物活性曲線および水質浄化量算定法を試みた.なお,モデル化に際して,過去数年の現地観測データの蓄積を予め必要としないことや,調査データが得られるごとに精度向上が見込めるという利点を意味している. (3)沿岸流動シミュレーションモデルの開発 瀬戸内海および広島湾を対象とした沿岸流動シミュレーションモデルを新たに開発し,現地観測結果と良好な一致を得た.特に,広島湾に流入する河川影響およびカキ筏の影響を高精度に取り込んだモデル化を行い,沿岸生態系モデルを開発する上での第一段階を終えることが出来た.また,広島湾の閉鎖性やカキ筏が湾内の物質流動に与える影響を明らかにした.
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