本研究では、沿岸域において"持続可能な開発"をすすめるには、開発行為による自然環境への影響を高い確度で予測されねばならないこと、それらの予測結果をもとにミチゲーションの立場から環境影響の回避や軽減に向けた対策が環境管理に反映されねばならないこと、等の背景から、水工学的に水域の流動状況を実時間的に予測し、インターネットを経由して、同時広域的に情報を配信する手法の構築を試みている。また、水質の予測シミュレーションモデルについて、大域的最適化手法の一つであるAdaptive Cluster Covering Method (ACCO手法)を適用することで、予測モデルに含まれる物質変化に関わるモデルパラメータの高度推定する方法について検討した。まず、水域の流動予測に関しては、3次元水理モデルの妥当性の検討が幾つかのテストケースをもとに実施されており、併せて、汎用型の水理モデルへと拡張している。また、この水理モデルは、諌早湾および島原湾への適用が図られると共に、WWWを用いた流動情報システムの予測エンジンに応用された。なお、流動情報システムについては、端末環境からの利用が可能なものとし、目下、試験運用している。つぎに、水質モデルのパラメータ自動推定については、数種類の水質モデルに対してその適用性が検討されており、既に、国内外で開催された学会にて成果発表している。本研究は、当初の計画に則って進められてきているが、今後はシステムの効率化やハイブリッド化を進め、適用性の向上ならびに実問題への応用を図る予定である。
|