研究概要 |
底流直上の水流流速や水質等の環境条件が時間とともに変化する場合,すなわち,非定常条件下における水・底泥間での溶存酸素(DO)や窒素・リン等の栄養塩の移動過程に関する検討を行った.研究代表者らによる定常等流状態における底泥直上の水中から底泥表面へと移動するDOのフラックス(SOD)に関するモデルを更に発展させて,底泥直上の水流流速が湖沼・貯水池等で発生する内部静振,内部波等に起因して同期的に変化する場合の水・底泥間でのDOや栄養塩等の溶質移動過程に関して,数値実験による検討を行った.その結果,底泥直上の水流流速の変化に伴い,濃度境界層の厚さ,および水・底泥境界面での物質移動フラックスが変化することを確かめた.すなわち,フラックスは水流流速(摩擦速度),内部静振や内部波の周期,対象とする溶質の分子拡散係数(シュミット数)とともに変化する.なお,この実験は,底泥直上の環境条件の変化に対する濃度境界層の応答に着目したものであり,底泥内部での生物化学過程に関しては考慮していない.次に,このような底泥直上の環境条件の変化に対する底泥内部での生物過程の応答を調べるために,生物過程に関する文献調査を実施し,これに基づいて底泥内部での生物化学的DO消費過程をモデル化した.モデル化に際しては,以上のようにして,得られたモデルによってコンピュータシミュレーションを行い,底泥直上の水流流速や水質が時間とともに変化する場合の溶質濃度分布と界面での物質移動フラックスの変化特性を調べた.すなわち,環境条件の変化に対する界面直上の濃度境界層での物質移動と底泥内部でのバイオマスの変化に起因するDO消費の応答を調べ,界面でのフラックスはこれら両者の応答によって決まるとともに,水流流速や底泥内部での酸素消費のポテンシャルに応じて律速段階が推移することを明らかにした.
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