研究概要 |
本研究の目的は,自発的な市町村合併・連携の結果が生活圏全体の効率性・厚生を必ず向上させるか否かを検証することである.その目的達成のため,地域間の社会基盤整備競争を明示的に含んだ形で,市町村合併のメカニズムを説明できる地方意思決定モデルを構築し,その均衡(提携,競争,連携など)のパターンの効率性および厚生を分析する.さらに,上位主体(中央政府)による仲介・調整が,合併の効率性・厚生に与える影響について分析し,その必要性を明らかにする.この目的の達成のため,研究初年度の平成14年度は以下の研究を実施した.まず,わが国全体における市町村の連携・合併に関する趨勢を調べるため,市町村における公共サービスの供給に関するデータおよび市町村合併の意思決定に関するデータの収集を行った.特に,宮城県における地域連携(広域事業組合など)の現状と,合併に関する市町村の検討状況について資料収集を行い,モデル分析のための基礎情報を収集した.一方,理論研究として,市町村の意思決定モデルの基本モデルを構築し,中央政府および地方政府間に地方公共施設整備に関する非対称情報が存在するとき各自治体の分権的・競争的公共施設整備により生じる非効率性をモデル分析により明らかにした.さらに,上位政府による税・補助金による介入が効率性に与える影響を分析した.このモデル分析により,上位政府が地方に関する最低限の情報を把握することにより,税・補助金を通じて効率的施設整備を分権的に達成することができることが示された.
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