循環型社会の構築にむけて廃棄物の再利用は重要な課題の一つであるが、一般にその発生と需要の空間的、時間的、さらに品質条件に関わるアンバランスが不可避かつ障害となる。このため、i)輸送・保管に係る物的機能を整備するとともに、ii)需給主体間のマッチングのための情報化あるいは組織化を図ることが必要である。 本研究は、ii)の課題に焦点を当て、廃棄物再利用がさらに促進されるように関係者間のマッチングをダイナミックに対応処理するための手だてや、授受されるべき情報の形式、伝達体系などについて分析及び考察を進めるものである。 これについて本年度の成果は次の通りである。(1)建設発生土再利用を対象として、特定地域(愛知県)における工事現場(発生土の供給地とも需要地ともなりうる)間の再利用土の輸送の実状を調べ、輸送問題の最適解を効率性基準とした場合に、現況下では現場間マッチングが非効率となっていることを明らかにした。(2)地域や現場の特性によりマッチングの最適な分布が達成できなくなる度合いを示す「頑健性指標」を作成し、これをもとにマッチングが行われやすい現場のクラスタリングを行った。結果として需給情報に関する情報交換を行う対象圏域を決める場合に地理的条件を優先する必要はないことがわかった。(3)現場の属性、現場間の特性を踏まえ、マッチングの形成を阻害する要因、促進する要因を調べた。これは現実の行政施策において有効な判断材料となるはずである。 以上、地域全体の効率性を基準において検討を行ったが、今後は、迅速性や民間事業の成立性などを考慮に入れ、より分散的な廃棄物再利用プロセスが社会的効率性をもたらす可能性を模索することが課題である。
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