既存の市街地において建物が密集しており、かつ、前面道路の幅員が十分広くない地域については防災面や施設整備の面、住環境の面などから建てづまりの問題を解消する必要がある。この問題に対しては広い範囲から注目すべき地域を選定していくことが大切となるが、建物の密集度を広域的に比較・分析するには地理情報の整備に多大な時間と労力が必要なこともあり、有効な対処法が確立されていなかった。そこで、本研究では広域性といった特徴のある高空間分解能衛星データを取り上げ、観測された建物の情報の利用に着目した上で建物の密集状態を自動的に定量化する分析手法を開発した。具体的には、建物の密集する状態は立地面積だけでなく、隣り合う建物間の距離も加味する必要のあることを指摘し、典型的な建物密集タイプにある地域を対象として、データの解像度に関するシミュレーションを実施した。その結果、建物の占める割合を示す面積占有率と、建物の集散の度合いを表すエントロピーが、立地面積と建物間の距離の要素をそれぞれで担うことを明らかにした。さらに、建物が抽出された広域データを対象として、ウインドウ処理を通じて面積占有率と、エントロピーとを計算した。典型的な建物密集タイプの領域を基準領域として設定し、計算結果を基に領域全体を対象として面積占有率とエントロピーを利用した判別分析を実施した。その結果、基準領域での判別精度は平均で92.5%であり、立地面積と隣り合う建物間の距離の2つの面から一般住宅地、一般住宅地ニュータウン型、中高層住宅地および工業地といった4つの建物密集タイプに領域単位で類型化できることが示唆された。
|