本年度においては、地球規模水文解析モデルとして、アメリカ気象研究センター(NCAR)によるCommunity Land Model(CLM)を改良し、本研究における温暖化による富栄養化に関する解析が可能なように改良を加えた。同時に温暖化解析に必要な諸データ(気象・水文)の収集を行い、データ変換を行った。また、富栄養化解析モデルにおいて、琵琶湖において研究代表者らが設計した3次元湖流・富栄養化解析モデルに改良を加え、流域毎の負荷による影響解析が行うことが可能なものに発展をさせた。また、アオコ形成を行う毒性プランクトンであるMicrocystis Aeruginosaにあわせた増殖メカニズムが解析可能なものとした。1次元の水質解析モジュールとして、動的生態系モデルの導入の検討を行った。 また、世界各地のダムや関連水域における状況の把握のため、国連環境計画ダムと開発プロジェクト(UNEP-DDP)主催で開催された第一回ダムと開発会議に参加し、各国におけるダム管理者との意見交換を行った。結果、富栄養化によるアオコによる被害は世界各地において共通に認識できる課題であることが明らかになり、UNESCO-IHPにおいては既に本テーマにおけるデータ収集を行っていることが判明した。 また、アフリカ・タンザニアのダルエスサラーム大学において、UNEP/ILEC/環境省主催の富栄養化モデルトレーニングコースの講師として現地を訪問し、アフリカにおける湖沼の現況と、富栄養化モデルの適用可能性について現地の科学者とともに検討を行った。また世界水フォーラムにおいては、UNEP/京都大学/ILEC/堀場製作所/環境省らと、アフリカや中国における淡水の現況に関するシンポジウムを主催し、地球規模における水資源の劣化についての発表情報を収集し、本研究における必要情報の構築を行った。 これらの成果を踏まえ、次年度以降においては、UNESCO-IHPとの情報交換と、CLMを用いた地球規模の温暖化解析を具体的に行っていく予定である。
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