研究概要 |
水環境のクリプトスポリジウム汚染の実態のgenotypeレベルでの把握をPCR-RFLPまたはPCR-Direct sequence法を用いた方法で行うため,それぞれの手法の検討とその手法を用いた河川,下水などの水環境の調査を行った。クリプトスポリジウムオーシスト1細胞を鋳型として用いるPCR法はポリスレオニン領域のプライマーを用いた場合にはIMS法と顕微鏡下での単離の手法で,純粋株ではほぼ100%に近い陽性率を得ることができた。一方,環境分離株では阻害やDNAの保存レベルあるいは種・株の相違によると考えられる陽性率の低下が認められたため,現在精製や洗浄,保存手法の検討を行っている。また,環境分離株の調査は主に下水,河川を対象に現在調査を進めており,河川分離株の一部ではPCR-RFLP法によって現行の試験方法では確認のできなかった種,株の同定に成功しCryptosporidium paruvum genotype2の汚染が確認された。このことは水源の汚染レベルの適正な把握と水源環境の保全のための基礎データとしてきわめて重要であり,今後もさらなるデータの収集をすべく,調査継続中である。また,調査対象を拡大し,河川,下水のみでなく,環境モニタリングに適したムラサキイガイを用いて,より高感度なクリプトスポリジウムの検出手法の開発も検討中である。今後は更なるデータの取得とPCR-Direct sequence法を用いたより詳細な遺伝子情報を取得し,種・株ごとの汚染レベルデータを水域ごとに取得して,水道水源を含む水環境の汚染レベルの詳細な把握とそれに基づいた水域環境の保全,汚染源対策などについての検討,考察を行う予定である。
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